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多様な生き方1:ヒジュラ [Microfinance]

マイクロファイナンスの私の仕事は、新規事業の立ち上げ。それをするために、この2ヶ月間、いろいろなNGOやその活動現場を訪問している(そしてあと2-3カ月それは続く)。この新規事業では、これまで通常のマイクロファイナンス機関が顧客層としてターゲットにできなかった(これはまた今度書くけれど、「貧困層」の人全員が盲目的にマイクロファイナンスの顧客になれるわけではない)、社会的最弱者層を顧客とするスキームを作り、パイロットプロジェクトを実施することでその人たちの生活改善を行う。ムンバイの「社会的最弱者層」に属する人々はたくさんいるけれど、私たちは今6グループをターゲットとして考えている。ゴミを拾って歩いている人(Rag picker)、物乞いをする人、障害者、ハンセン氏病患者、ヒジュラ(下記参照)、売春婦。どれも興味深いテーマばかりだ。なかなかその実態を描写する報告書はないから、少しずつ、訪問したら書いてみようと思う。

今日の訪問先は、ヒジュラ(Eunuch)のとあるグループのドン。Eunuchという単語を聞いたことがあるだろうか?辞書を引くと「去勢された男、宦官」と出てくる。ヒジュラは、インドネシアやマレーシアにいる「おかまちゃん」「性転換者」とは少し違う。4000年前から存在し、昔は王族の身内として、王の何人もいる妃たちに仕え、踊りを職業としながら妃たちのボディガードを務めた、特殊な階層の人々だった。それがイギリス統治の時代にその制度が廃止され、ヒジュラたちはストリートに放り出された。今では、結婚式子供が生まれたときにblessingの儀式を行うか、物乞いをするか、売春をするか、の3つの選択肢の中で食いつないでいる、というグループである。

確かに車で町中を走っていると、信号待ちをしているときなどサリーを着た男の人(だけど女の人)がよく窓をコンコンと叩いてお金を求めてくる。今日訪問したヒジュラグループのドンは、もうどこからどう見ても普通のおばあさんで、ヒジュラ歴60年の大ベテランだった。ヒジュラは非常に厳格な、保守的なヒエラルキーの中で暮らしている。グルと呼ばれる彼女の前で、下っ端のヒジュラたちが口をきくことは固く禁じられ、グルの許可なく部外者にヒジュラの暮らしを話すこともまた固く禁じられている。破ればグルから虐待を受ける。グルは毎日決まった額の奉納金を下っ端のヒジュラたちに納めさせ、金額が定額に満たなければこれもまた虐待の対象となる。グルである彼女はあがりだけで暮らし、そのあがりで下っ端まで含めたグループの生活を回しているのである。彼女の家は「ひどいところだから用心して」と言われていた割に、適度に広く、適度に快適で、大量の真鍮食器が天井から床まで並んでいた。出されたコーヒーも甘くておいしかった。

アルコール中毒であるそのおばあさんは、ドスの効いた声で話し、多分に話は脱線したけれど、知的レベルの高い、しっかりとした人であった。私に向かって「パスポートを申請するから、もらえたら私を日本に連れて行け。そしたら日本で踊ってやる!」と言って歌を歌い、手振りをし、周りを大笑いさせていたけれど、帰るときには真剣に私の頭に手を置き「神のご加護を」と祈りをささげてくれた。おばあさんの手は、大きくてごつごつしていて、「男の人の手」であった。彼女の下っ端のヒジュラの子と帰り道に話をしたけれど、彼女はか細い、でもグルと比べると「男の子」の要素の多分に残った(髭、ちりちりの髪の毛、サリーのおなかから見える体毛などなど)人だったけど、とてもソフトででも芯のしっかりした人だった。「美容院をやりたいの。自分はいい家の出身だから、物乞いをして稼ぐなんて私にはできない」と、大きな目で真剣に訴えてきた。

ヒジュラコミュニティの多くは、IDを持つことができない。インドでは戸籍がないから、自己証明は納税カードや選挙カード、運転免許証や居住証明書(政府発行)を持って行う。でも、生まれた家を捨て、ヒジュラのグルに養子にされることで名前が変わり、性別も男でもなく女でもない彼女たちは、往々にしてIDを発行してもらうことはできず、したがって選挙権もなければ携帯電話の番号すら合法的に入手することはできない。ましてや銀行口座を開くこともできないからお金を借りて事業を始めるなんてことは夢のまた夢なのである。

ヒジュラのグループ内は多様である。進歩的考え方をもつ者(とってもレア)、保守的な古いしきたりと厳格なヒエラルキーの中で生きている者、売春をする者、HIV感染する者、絶望している者、誇り高く生きる者。このおばあさんのグループはヒジュラの中でもおそらく恵まれたグループだと思われ、結婚式や子供の誕生時に行うblessing(祈り)だけで生計を立てているという。来週は違うNGOに属する違うタイプのヒジュラグループを訪問し、その多様性を探る。そんな中で、下っ端のヒジュラたちに教育と職業訓練の機会を供与することで、彼女たちが希望する仕事を通じてささやかな収入を得、そのことによって人間としての尊厳をもって生きていけるような仕組みを考え、実行したいと思う。
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